マンションの給排水設備
今回は、マンションにおける給排水設備についてみていきます。
1⃣給排水設備とは
給排水設備とは、給水設備と排水設備の総称です。給水設備は、建物に水を供給するための設備全般のことで、主に上水道から飲料水用の水を建物内に送り込むために設置され、給水管、給水ポンプ、給水タンク、給湯設備などがあります。一方、排水設備は、生活に使った水を排出するための設備全般のことで、台所、浴室、トイレなどで使用された水を下水道に流すため設置され、排水管、排水ポンプなどがあります。
2⃣給排水の重要性
給排水設備は人間の健康に大きな影響を与えるため、必要不可欠なものといえるでしょう。もし給水設備が故障して飲料水が供給されなくなれば、我々は日常生活を送れなくなってしまいますし、水道管中のさびの発生や、万が一下水道と飲み水が混じってしまえば、汚染された水を口にすることになります。また、給水設備だけでなく、排水設備においても、老朽化や排水管が詰まって汚水が下水道に流せなくなってしまうと、空気が汚染され、不衛生になり細菌などによる感染リスクも発生してしまうでしょう。そのため給排水設備には、点検・メンテナンスが欠かせません。建築基準法第12条で定期的な点検が義務づけられており、定期的に給排水設備を点検して、行政に報告しならない旨、規定があります。生活に必要不可欠だからこそ、法律の面からもアプローチがあります。
3⃣給水設備の種類
給水は、建物に水を供給するための設備全般と説明をしましたが、詳しくみると、そもそも給水に含まれるのは、①飲料用に浄化されて上水道から供給される上水②地下から組み上げられる天然水である井戸水(地下水)③雨水をためて浄化した雨水④使用された上水を下水道に流さずに、再生処理してトイレ用や消火用などに利用する中水(雑用水)⑤工場などのための工業用水の5つに大きく分けられます。これらを建物に供給する給水設備について、さらに1つずつみていきます。
・給水管
上水道の本管から建物内に水を引き込むための配管で、腐食や老朽化しにくいよう、硬質塩化ビニルやステンレスなど耐久性に優れた素材で作られたものが使われます。
・貯水槽
上水道から引き込んだ水を、一旦ためておくためのタンクで、大別すると①受水槽(主に建物の1階・地階に設置される)②高置水槽(建物の屋上などに設置される)があります。
・給水ポンプ
上水道の本管や貯水槽からの水がそのままでは建物内に行き渡らないため、圧力をかけるなどして水を引き込むためのポンプで、用途によって3種類あります。①揚水ポンプ(高置水槽がある大型の建物やマンションで使われ、水道本管から引き込んだ水を一旦受水槽に貯めて、揚水ポンプの力で高置水槽まで汲みあげる。②加圧ポンプ(小〜中規模のマンションなどで利用されることが多く、水道本管から引き込んだ水を一旦受水槽に貯めて、加圧ポンプで各戸に給水する。③増圧ポンプ(中規模マンションなどで利用されることが多く、貯水槽を利用せず、水道本管から引き込んだ水に増圧ポンプで圧力を加え、直接各戸に給水する。
・給湯設備
湯沸かし器などの給湯設備、給湯専用ボイラー、循環ポンプなどです。
給湯設備は高温のお湯を給水するため、配管などの器具は膨張に耐えられる素材と構造になっています。
4⃣排水設備の種類
排水は、大きく以下の2つに分けられ、トイレ洗浄後の水を汚水。台所、洗面所、浴室、洗濯などで利用したあとの生活排水を雑排水とそれぞれ呼ばれます。また、生活に利用した水以外に、雨どいなどに集まった雨水を処理するためにも排水設備が利用されます。
・排水管
建物内で使用して汚れた水を、下水道管まで送り出すための配管です。
腐食しにくいよう、硬質塩化ビニル管、耐火二層管などが使用されます。
排水管は、設置される場所により以下の2つに大別されます。
①屋内排水管②屋外排水管
排水の種類によっては以下の3つに分けられます。
①汚水排水管(トイレの洗浄水のみを流す)②雑排水管(台所や洗面所、浴室、洗濯機などで使用した排水を流す)③雨水排水管(雨どいなどから集まった雨水を、屋外の下水管に流す)
・通気管
排水管の中は、水が流れるときもあれば空っぽのときもあり、管内の空気圧がつねに変化しています。それを調整して排水がスムーズに流れるようにするために、通気管を設けます。排水管の中を換気する役割も担っています。
・排水槽・排水ポンプ
排水は通常、自然に排水管を通って下水管に流れていきます。
が、建物の構造などによって自然には流れない場合があるのです。
そんなときには、排水槽と排水ポンプが必要になります。
排水を一旦排水槽に貯めておき、排水ポンプで下水道に送り込む仕組みです。
排水槽には、以下の2種があり、建物の地階に設置されることが多いようです。①トイレの排水専用の「汚水槽」②生活排水用の「雑排水槽」
5⃣建築基準法で定められた点検
まず、建築基準法第12条で定められた点検報告制度があります。
規定の条件に合致する「特定建築物」の持ち主は、「建物の敷地」、「構造建物の設備」について、国が定める検査項目を点検する義務があるのです。
点検サイクルは地域によって違いますが、おおむね6ヶ月〜1年ごとに行って、建物が属する「特定行政庁」に結果を報告します。
点検内容は、以下の通りです。
給水設備:受水槽や高架水槽、加圧給水配管の設置場所が適正か、運転の異常、腐食・漏れなどはないか
排水設備:汚水槽や排水管などの設置場所が適正か、運転の異常、腐食・漏れなどはないか
資格を持った専門家に依頼して点検してもらいます。
・ビル管理法で定められた点検
「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(通称「建築物衛生法」「ビル管理法」「ビル管法」)では、規定の管理基準に従って給水・排水を管理しなければなりません。
これは戸建住宅などには適用されず、不特定多数が利用するビルなどの建物に限ります。
水質検査や設備の清掃頻度などについて厚生労働省が基準を定めているので、それに従って管理しましょう。
管理について簡単に説明すると以下の通りです。
管理内容:厚生労働省が定めた水質検査や清掃を行い、基準に適合する水質や環境を保つ
もし測定値が基準に適合しなかった場合は、給水設備を改善するなどして基準を守る
管理方法:水質検査や清掃は、専門業者に依頼するとよい
管理する水は以下の3種類で、それぞれに基準が設けられています。
1)飲料水
2)雑用水(水道水以外の水を、散水、修景、清掃、水洗便所の用に供するもの)
3)排水
6⃣まとめ
給排水設備とは、給水設備と排水設備の総称で、給水設備は、建物に水を供給するための設備全般のこと。主に上水道から飲料水用の水を建物内に送り込むために設置され、給水管、給水ポンプ、給水タンク、給湯設備などがあり、一方、排水設備は、生活に使った水を排出するための設備全般のことで、台所、浴室、トイレなどで使用された水を下水道に流すため設置され、排水管、排水ポンプなどがありました。給排水設備には、建築基準法で定められた点検、ビル管理法で定められた点検が必要になるため、給排水設備をすこしでも意識し、適切に管理できるよう心掛けることができると良いと思ます。