購入する物件の津波被害が心配
今回は不動産売買契約書へ記載の必要な津波災害警戒区域・津波災害特別警戒区域についてみていきます。
・津波災害警戒区域
津波防災地域づくりに関する法律という法律に基づき指定された津波災害のおそれがある区域で、最大クラスの津波が発生した場合住民の生命または身体に危害が生ずるおそれがある区域、また、津波から逃げることができるよう警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域のことで、都道府県知事が指定します。
・津波防災地域づくりに関する法律
前述の通り、津波災害警戒区域や津波災害特別警戒区域は「津波防災地域づくりに関する法律」に定められており、東日本大震災の甚大な津波被害を教訓に、最大クラスの津波からなんとしても人命を守るという考えのもと、津波災害を防止・軽減して安全な地域を整備するための法律で2011年に制定されました。
・津波災害警戒区域に指定された場合
津波災害から生命を守るため、災害情報の伝達や避難が早くできるように、ハザードマップを作成して住民に知らせるなどの警戒避難体制の整備が図られます。不動産取引に関していえば、宅地建物取引業者は、対象物件が津波災害警戒区域に指定されている場合その旨を記載し説明を行わなければなりません。(指定がない場合も、指定がない旨の説明が必要です。)
・津波災害特別警戒区域
津波災害警戒区域のうち、最大クラスの津波が発生した場合建築物に損壊が生じ、または浸水し、住民の生命または身体に著しい危害が生じるおそれがある区域で特に防災上の配慮を要する方々が利用する社会福祉施設、学校、医療施設の建築とそのための開発行為に関して、居室の床面の高さや構造等を津波に対して安全なものとするために都道府県知事が指定する区域、また、特に迅速な避難が困難な区域で、住宅など市町村の条例で定める用途の建築とそのための開発行為に関して、居室の床面の高さや構造等を津波に対して安全なものとするために市町村の条例で指定する区域のことです。
・津波災害特別警戒区域に指定された場合
津波災害特別警戒区域内の土地・建物には次のような制限行為があります。
一定の社会福祉施設、病院、学校が津波に対して安全な構造のものとして省令に定める技術的基準に適合
上記の用途の開発行為が擁壁の設置など土地の安全上必要な措置が省令で定める技術的基準に適合
条例で定める用途の建築物が津波に対して安全な構造のものとして省令に定める技術的基準に適合
市町村条例で定める基準に適合(①居室の床面の全部または一部の高さが基準水位以上、または②基準水位以上の高さに避難上有効な屋上その他の場所が配置、当該場所までの避難上有効な階段その他の経路)
住宅等の開発行為が擁壁の設置など土地の安全上必要な措置が省令で定める技術的基準に適合
・指定方法
指定にあたっては、都道府県と各市町村が事前調整を行い、指定の意向が固まった市町村から順次、関係住民や関係団体への説明会を開催し、最終的な市町村の意向を確認した後、区域指定を行います。説明会については、事前に広報等で開催を通知します。
・さいごに(不動産に対する影響について)
津波災害警戒区域・津波災害特別警戒区域に指定されると不動産価値が下がる可能性があるのではないかと考えます。津波災害警戒区域と聞いてその意味を詳しく知っている人は決して多くはないですが、東日本大震災以降、国民の津波に関する意識が高くなっており、買主の立場から見て、津波エリアに該当することは、マイナスになることはあっても、プラスになることないのではないでしょうか。一般消費者の津波に対するイメージという点で見れば、不動産の価値が下がる可能性は十分あるのではないかと思います。(不動産価値に影響はないともいわれていますが、実際はどうなのでしょうか。今後の動向に注目したいと思います。)